「コーヒーの酸味は苦手だからできるだけ酸味の少ないコーヒーがいい」
コーヒーの好みを聞くとこのように答える人がいますが、コーヒーの「酸味」と「酸化」は違うということをご存知でしょうか。
コーヒーは酸化すると酸っぱい味になって、最終的には腐って飲めなくなりますが、酸味は本来コーヒーの味を決める上での大切な要素のひとつです。
つまりコーヒーの酸味とはコーヒーの味を決めることにつながるひとつの個性ですが、コーヒーの酸化とは劣化を意味しています。
- 果実のような爽やかさ
- 苦味を和らげる
- 豆や淹れ方によって酸味が違う
- コーヒーの飲み方によっても酸味が違う
- 香り、風味を損ない味が劣化する
- 栄養がなくなる
- 胸焼けしたり吐き気がしたりすることも
- コーヒーの酸味の特徴が失われる
コーヒーの酸味について知ると、自分が好きなコーヒーの味がわかるようになりますが、同時にコーヒーが本来もっている酸味を十分に味わうためにはコーヒーの酸化を防ぐことが必要です。
この記事ではコーヒーの酸味とは何かを知り、酸化を防ぐための具体的な方法を解説します。
Contents
「酸味」のあるコーヒーと「酸化」したコーヒーの味の違い
コーヒーの酸味についての理解を深めるために、まず酸味と酸化の違いについて少し解説していきます。
コーヒーの酸化とは劣化した状態
「酸化」とは平たく言うと物質と酸素が結びつくことです。そして物質は酸素に触れると性質が変わります。例えば鉄くぎが酸化するとその性質が変わり「さびた鉄くぎ」になってしまいます。
それで「コーヒーが酸化する」という場合コーヒーという物質が酸素に触れてその性質が変わってしまう、ということです。
たまに「コーヒーを飲むと胸焼けがする」という人がいますが、それはコーヒーが原因ではなく「酸化したコーヒー」が原因になっている場合がほとんどです。
また酸味のあるコーヒーを「すっぱいコーヒー」と勘違いしている人もいますが、それもやはりコーヒーの酸味ではなく「酸化したコーヒー」が原因です。
実際私たちの飲むコーヒーの多くはすでに「酸化したコーヒー」になっていてコーヒーの酸味をちゃんと味わえない場合が多いので、残念ながら酸味と酸化を勘違いしている人が多くいます。
細かく説明すると話が脱線しますので割愛しますが、「酸化」の定義は厳密にいうとここで書かれていることと当てはまらないこともあります。しかしこの記事では酸化を全て「劣化した状態」としています。
コーヒーの酸味とは果物の酸味
このようにいうとよくわからないという人もいますが、コーヒーがもともと果物(コーヒーチェリー)であるということを知るとよく理解できます。
本当に美味しい酸味のあるコーヒーを飲むと大抵の人は感動しますが、それは新鮮なコーヒー豆(すなわち酸化していないコーヒー)に限ります。
そしてここがコーヒーの面白いところですが、コーヒー豆によって酸味が強い・弱いがあるだけでなく、「柑橘系の酸味」や「チェリーのような酸味」など違いがありますので、コーヒー豆の個性を楽しめます。
もちろんこうした事実を知った上でやはり酸味は少ない方が美味しいと感じる人もいますが、この果物のような酸味と劣化による酸化を取り違えないでおきたいところです。
コーヒー豆は果実の部分を取り除き、種子を焙煎して挽いたものをお湯などで抽出して飲みます。
ちなみにジャコウネコはコーヒーの木から野生の感で最もいいコーヒーチェリーを選び、果実を食べたら中の種子が消化されずにフンと一緒に排出されます。ジャコウネココーヒーは、そのフンを取り出して洗浄したもので大変高価なものです。ジャコウネココーヒーについて詳しくは次の記事をお読みください。
コーヒーの酸味が関係する6つの条件と酸味の少ない淹れ方
コーヒーの酸味は次の条件によって変わりますので、コーヒーが好きな人は自分の好きな酸味の度合いや種類のコーヒーを飲むために調整します。
- コーヒー豆
- 焙煎方法
- 挽き方
- 水
- 抽出時間
- コーヒーの温度
条件①コーヒー豆:酸味の強いコーヒー豆と酸味の少ないコーヒー豆
酸味の少ないコーヒー豆の代名詞はマンデリン、強いコーヒー豆はキリマンジャロですがそのほかにも次のようなコーヒー豆があります。
- インドネシア・トラジャ/マンデリン
- インドネシア/ベトナム・ジャコウネココーヒー
- ベトナムコーヒー
- タンザニア・キリマンジャロ
- ジャマイカ/イエメン・モカ
- ハワイ・コナ
また次のコーヒー豆は適度な酸味があるので、酸味が苦手な人も美味しく飲める万人受けする味です。
- コロンビア(丸みのある酸味。選び抜かれた高級豆「エメラルドマウンテン」も飲みやすい)
- ジャマイカ・ブルーマウンテン(苦味とコクのバランスがいい)
- ブラジル・サントス(中庸で初心者向け)
コーヒー豆は酸味があるかないかだけではなく、酸味の種類も変わる大切な要素です。
焙煎したての新鮮なコーヒー豆で淹れたコーヒーを飲み比べをして、好みの酸味を見つけてみてください。
条件②焙煎方法:深煎り焙煎で酸味が少なくなる
コーヒーには8種類の焙煎方法がありますが、深く焙煎すればするほど酸味が少なくなり浅く焙煎すればするほど酸味が強くなります。
浅煎りは今までほとんど流通していませんでしたが、近年ではサードウェーブの影響によりコーヒー豆の酸味をしっかりと味わいたい方を中心に人気が出てきています。
しかしよほど好きな方でない限り、ホットコーヒーで飲む場合は中煎りの中の3つ、アイスコーヒーの場合は中煎り・深煎りの6つの中から決めることをお勧めします。
条件③挽き方:細挽きで酸味が少なくなる
細かく挽けば酸味が少なくなり荒く挽けば酸味が強くなりますが、基本的に挽き方は器具にあわせた方が美味しくコーヒーを飲めます。
酸味の強いコーヒーが飲みたい方は金属フィルターを買うなど、器具そのものを変えてみることをおすすめします。
条件④水:硬水で酸味が少なくなる
コーヒーは硬度が高ければ高いほど苦味が強く口当たりが軽くなり、硬度が低ければ低いほど酸味が強く口当たりが軽くなります。
日本人はペーパードリップで飲むことが多いですので、硬度が低ければ低いほど酸味が強くまろやかなので美味しく感じるというのが一般的な意見です。
一方欧州は硬度が高くてドリップコーヒーが飲みにくいので、硬水に適した苦味がしっかり味わえるエスプレッソやカフェラテなどが誕生しました。
条件⑤抽出時間:じっくり抽出すると酸味が少なくなる
はじめに酸味成分が出て後から苦味やコクの成分が抽出されますので、短時間で抽出すると酸味が強調され、じっくり抽出すると酸味が少なくなり、代わりに苦味やコクが強調されます。
細挽きならそれだけ抽出時間が長くなりますので酸味が少なくなりますがそれだけでなく、ドリップするときは意識的にゆっくりコーヒーを淹れれば酸味が少なくなります。
条件⑥温度:アイスコーヒーは酸味が弱く感じる
私たちの舌は温度が高ければ高いほど酸味を強く感じ、温度が低ければ低いほど酸味を弱く感じます。
コーヒー豆の酸味をしっかりと味わいたい方は夏でもホットコーヒーを飲みたいと思うかもしれませんが、アイスコーヒーの酸味が苦手なら条件①〜⑤に書かれている他の条件で調整しましょう。
酸化を防いでコーヒーの酸味を十分に味わう方法
コーヒーの酸味は好き好きですが、酸化はコーヒーの味を損なうだけですのでできるだけ防ぐことが大切です。
コーヒーをドリップした時にモコモコ膨らんでいるなら酸化していませんが、変わらなければ酸化が始まっていますのでそのコーヒーは新鮮とは言えず、味が損なわれ始めています。
生モノの酸化を完全に防ぐことは難しいですが、次の点を意識すれば酸化する前の新鮮なコーヒーを飲むことができます。
- 保存期間に気をつける
- 保存方法に気をつける
- 挽きたてのコーヒーを淹れる
- コーヒーを淹れたらできるだけ早く飲む
【保存期間】賞味期限に関わらず焙煎後1ヶ月以内に飲み切ろう
コーヒーは焙煎してから2週間後から風味や香りが失われていきますので、できれば2〜3週間以内、遅くても1ヶ月以内に飲み切るようにするのが大切です。
購入してから1ヶ月以内ではなく焙煎後1ヶ月以内ですので、コーヒーを毎日飲む人でも焙煎してすぐのコーヒー豆を買うことは非常に大切です。
スーパーで売っているコーヒー豆はもちろんですが、自家焙煎のコーヒーショップでも焙煎してから1ヶ月近くたったものを売っている場合が少なくありませんので、購入する頃にはすでに酸化へと近づいています。
そこでおすすめしたいのが注文を受けてから焙煎してくれるネット通販でコーヒー豆を買うことです。
下記のサイトの「朝起きるのが楽しみになる!ネットで買えるおすすめの美味しいコーヒー豆3選」という見出しでは本格的に美味しいコーヒー豆から1g当たり1円ちょっとで買えるコーヒー豆を紹介していますので、参考にしてください。
【保存方法】冷凍庫はNG?酸化の原因となる4つの要素
コーヒー豆は常温で販売されていますが、それは冷凍庫に保存すると湿気がつきやすくなりそれが酸化の原因となるからです。
以下はコーヒー豆の酸化する原因となるものなので、なければないほど(低ければ低いほど)酸化速度を遅らせることができます。
- 酸素
- 光(紫外線)
- 温度
- 湿度
それでコーヒーを保存するなら、次のような発泡スチロールの箱にお菓子などについている乾燥剤を入れて冷暗所で保存してください。
夏期に1ヶ月以上長期で保存する場合、風味や香りは落ちてしまいますが腐らないようにできるだけ密封状態にして冷凍庫で保存してください。
【挽きたてコーヒー】コーヒーミルを買って豆の状態でコーヒーを買おう
コーヒーは粉にすると酸素に触れる部分が1,000倍以上になりますので、一度挽くと酸化が急速に進んでしまいます。
豆の状態なら酸化が始まるのは2週間後ですが、粉の状態なら24時間以内に始まります。
せっかくいい豆を買っても酸化してしまっては意味がありません。コーヒーミルは一度買うだけでずっと使えますので、良い豆を買う以上に重要です。
「挽きたてのコーヒーを飲むためにコーヒーミルを買おう」では、気軽な値段で買えてインテリアにもなる手動式のコーヒーミルや喫茶店においてあるような本格的なものまで紹介していますので参考にしてください。
【温度】ホットコーヒーなら30分!アイスコーヒーなら48時間!
コーヒーの酸化は温度に影響されますので、抽出する際の温度とその時間によって次のように酸化が進みます。
コーヒーの種類 | 関係する温度 | 酸化のピーク |
---|---|---|
ホットコーヒー | 熱湯で淹れて熱いまま飲む | 30分後 |
急冷式アイスコーヒー | 熱湯で淹れて急速に冷やす | 48時間後 |
水出しコーヒー | 水で抽出して冷やす | 72時間後 |
氷コーヒー | アイスコーヒーを凍らす | 1ヶ月後 |
保存方法や抽出方法によっては温度や他の酸化する要素が加わりますので、必ずしも上記の時間が当てはまるわけではありません。
例えばホットコーヒーは冷蔵庫に入れて冷やしてもアイスコーヒーにはなりますが、急冷式と比べて温度が高い期間が長くなりますので酸化スピードが早くなります。
急冷式アイスコーヒー、水出しコーヒー、氷コーヒーとはそれぞれ耳慣れない言葉かもしれませんが、下記の記事で作り方とともに詳しく解説していますので、興味のある方は参考にしてください。
マイボトルならアイスコーヒーがおすすめ
これらの理由からマイボトルに入れてコーヒーを持ち歩きたいという人は、熱々のコーヒーはあまりおすすめできません。
せっかくのコーヒーが酸化してしまいてあまり美味しくなくなってしまうからです。
しっかりと冷やしたアイスコーヒーなら一日中酸化していないコーヒーを飲むことができますが、どうしてもホットで飲みたいなら60度程度に温度を低くしてからマイボトルに入れておくことをおすすめします。
【まとめ】コーヒーの酸化をしっかり防いで酸味をじっくりと楽しもう
コーヒーの酸味とは果物のような爽やかな酸味で、酸化とは違います。酸味がどれほど強いかは好き好きですが、次の要素を変えることで酸味を調整することができます。
酸味に関わる要素 | 酸味が弱い | 酸味が強い |
---|---|---|
コーヒー豆 | マンデリン他 | キリマンジャロ他 |
焙煎 | 深煎り | 浅煎り |
挽き方 | 細挽き | 粗挽き |
水の硬度 | 低い | 高い |
抽出時間 | 短い | 長い |
温度 | 高い | 低い |
コーヒーの酸味をしっかり味わいコーヒーの酸化を避けるために豆の状態で保存し焙煎してから1ヶ月以内に使い切り淹れたらできるだけ早く飲み、酸素、紫外線、高温多湿を避けて保存しましょう。
コーヒーの酸味は酸化と違いコーヒーの個性ともいえる重要な要素です。酸味が苦手だと思っていた人もどうぞ一度新鮮なコーヒー豆でいれた爽やかな酸味のあるコーヒーを飲んでみてください。