ベトナムの宗教とタブー!日本との類似点が興味深い

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近年ベトナム旅行の人気が急激に高まっていること、また日本においてもベトナム人と接触する機会が増えている方もたくさんおられると思いますが、ベトナムの宗教についてはあまり知られていません。

日本人は宗教アレルギーがあるので宗教というと嫌なイメージがあるかもしれませんが、その国の文化を知るためにはまず宗教を理解する必要があります。

特にベトナム人の宗教感と日本人の宗教感はとてもよく似ているところがある一方で、日本とは根本的に違うというベトナムならではの宗教観もあるので、日本人にとってベトナムの宗教観は非常に興味深いです。

今回はそんなベトナムの宗教事情について紹介します。

なおこの記事はベトナムの文化を紹介する一環で宗教を紹介するのが目的ですので、特定の宗教を高めたり低めたりすることはありません。

ベトナムの宗教とタブー

他国の宗教となると、まず気になるのはその宗教がタブーとしているものや食事についてかもしれません。これらについて知らないとマナー違反となるだけでなく面倒な事態に巻き込まれることがあるからです。

結論から言いますとベトナムで政府や政治に関わらなければ宗教に関して特に気をつけなければならない点はありません。しかし知っておくと興味深い幾つかの点があります。

ベトナムの宗教的にタブーなものや習慣

ベトナムは宗教的に寛容ですので、少数派のヒンドゥー教徒やイスラム教徒を除き、基本的にタブーとされているものはありません。

ただしベトナムは儒教の影響が強いので、年長者を敬わなければなりません。

それでバスなど公共の乗り場で年上の人が入ってきたら、若い人はすぐに立って席をゆずるのが普通ですし、若い人が年配の人より先に食べてはいけないことになっています。

この傾向はハノイやホーチミンなど大都市では最近ほとんど見られませんが、農村ではまだこの傾向が残っています。

赤ちゃんについてのタブー

ベトナムでは赤ちゃんの時に褒めると霊が嫉妬して将来その子が褒め言葉と反対なことを起こさせると考えられていますので、褒め言葉はかけないようにしてください。

また家族以外の初めて会う人に似るとも考えられています。

基本的に日本人はベトナム人に好かれていますので喜ばれることも多いですが、変な因縁をつけられたくならいならベトナム人んお赤ちゃん産まれてもすぐに会いに行かない方が無難です。

器を口につけたりすすってたべない

宗教的な意味合いはないようですが、ベトナムでは器を持ち上げて口につけたり、麺を豪快に啜って食べたりするのはマナー違反とされています。

フォーなどを食べるときはレンゲを使って、できるだけ音が出ないように食べてください。

ベトナムの宗教史

ベトナムは歴史的に中国の影響を最も受けており、仏教や儒教がベースとなっています。

キリスト教の宣教が始まってから一部の地域ではキリスト教が増えていますが、それでも以前として仏教の信徒数は多く、その後ベトナムの宗教カオダイ教やホアハオ教も、仏教をベースにキリスト教や他の宗教の影響を受けて始まりました。

ベトナムの歴史に影響を与えたキリスト教

ベトナムはキリスト教国というイメージはあまりないかもしれませんが、実はアジアの中ではフィリピン、韓国に次いでキリスト教徒が多い国です。

ベトナムのキリスト教徒の数はそれほど多くはないとは言え、ベトナムの歴史の中で重要な転換点はキリスト教が深く関係しています。ここでベトナムの歴史にキリスト教徒がどのように関わっているかを紹介しましょう。

年代出来事
1533年北部のナムディン省にポルトガル人の宣教者が初めてキリスト教の伝道を始める。
1615年フランス人の宣教者アレクサンドル・ドゥ・ロードが宣教を開始する。この時にベトナム語を今までの漢字表記から現在のアルファベット表記の方法を考案した。
1630年キリスト教は弾圧される。
1885年フランスによる植民地支配が始まると、北部を中心に再びキリスト教の信者の数が増え始める。
1886年 ハノイ大教会が建設。
1895年石造りのサパ教会建設
1954年フランスの植民地時代の終わり。ベトナム南北分断。
1955年アメリカの後押しで南部のサイゴン(現在のホーチミン市)がキリスト教を優遇する政策をとるが北部では制限が再び始まる。
1975年ベトナム戦争が終結し共産主義政権が勝利を収めると、キリスト教の制限は再び全国に広まる。
1986年ドイモイ政策がとられるとキリスト教に対して再び寛容になり、カトリックとプロテスタントなど一部の宗派は国の宗教として認められる。
2018年誰もが特定の宗教を信じる自由を持つ権利を有すること、また外国人も国内での宗教施設の説教を行うことができる等ベトナム初の宗教信仰法可決。事実上すべてのキリスト教が公認となる。

このようにベトナムの歴史においてキリスト教は切っても切れない影響があり、弾圧と増加の繰り返しとなっているのも興味深いところです。 

またベトナム語のアルファベット表記、各地の観光地化、また「フォーの歴史から見る本物のフォー」でも解説しているベトナムの伝統料理フォーなど、ベトナムにとって非常に大切な文化はキリスト教が少なからず関係しています。

ベトナムの国教は仏教 でも最も多いのは無宗教

ある調査によると、ベトナムの宗教の比率は次のようになっています。

宗教比率
仏教7.9%
カトリック6.6%
その他の宗教0.9%
無宗教81.8%

一方ベトナムの外務省が発表しているベトナムの宗教の割合は、次のようになっています。

宗教比率
仏教80%
カトリック9%
カオダイ教4%
プロテスタント1.5%
ホアハオ教1.4%
その他の宗教4.1%
ベトナムの外務省より

このように調査結果が違うのは、実際に信仰があるかどうかの違いということになります。

つまり日本においてもそうですが親が仏教なら子供も仏教徒とに入信する儀式はしなくても自動的にカウントされるわけですが、その人に信仰があるかどうかはまた別問題というわけです。

ベトナムでは多くの人が冠婚葬祭の時は仏教の様式で行いますが、本当に仏教を信じている人はその中でもごくわずかです。

ベトナムは無宗教の国

現在8割以上を占めているのが無宗教で、その数は年々増え始めています。この中には形式的には仏教徒ですが、自分を仏教徒という信仰を言いあらわさない人も含まれます。

このようにベトナムは自分が無宗教であると考える人の比率は非常に高いのですが、先祖崇拝に関わるような宗教的な儀式は熱心に行います。

また統計数理研究所調査科学研究センター特任研究員服部浩昌氏の調査では次のことが明らかになっています。

  • 宗教的な心は大切かという質問に対して、6割以上が「大切でない」と答えた
  • 「先祖を尊ぶべきだと思うか」という質問には99%の人がそう思うと回答した。

このようにベトナム人の宗教感で最も大切なのは先祖で、特定の宗教組織に属しているかどうかはそれほど重要ではないようです。

なおベトナム人の神に相当する単語はたくさんあります。いわゆる神はThầnですが、聖書の神はĐức Chứa Trờiと別の単語を使っています。キリスト教徒ではないベトナム人にとってThầnは「敬うべき存在だが人間からは遠い存在」ですが、先祖は「自分たちを存在させてくれた大切な方」というイメージになっています。この点はベトナムの諺“Uống nước nhớ nguồn”(水を飲みて源を思え)によく表れています。

無宗教でも宗教心がないわけではない

宗教心を「人間の英知を超えた存在に対する畏敬の念」と定義するならベトナム人は宗教心があります。

毎週教会に通うとか、毎日神に祈りを捧げるというようなクリスチャンやムスリムがするようなことはしなくても、ほとんどの家や店には小さな祭壇があり、先祖が祀られています。また仏教国のはずなのに「神」と書かれている場所もあります。

筆者ががベトナム人の幾人かに宗教心について尋ねてみたところ、「神はいるかもしれないが先祖は自分を産んでくれたのでもっと大切である」という意見が多かったのが興味深いところでした。

つまりベトナム人は何かの宗教に属すのは抵抗があるが、先祖は「人間の英知を超えた存在に対する畏敬の念」の対象にしやすい、言い換えると何かを崇拝したいという対象にしやすいようです。

ベトナムの新興宗教と社会問題

日本ではあまり見かけませんが、「母なる神の教会」Hội Thánh Đức chúa Trời Mẹ(正式名称:神様の教会世界福音宣教協会)という新興宗教による強引な勧誘がベトナムで社会問題になっています。

さらに新型コロナ集団感染で話題の新興宗教「新天地イエス教会」はすでに2019年8月にベトナム中部の観光地ダナン市で「韓国留学のサポートをすると偽って違法な宗教教育をした」として勅発されています。

同月20日19時30分に区警察の治安部隊と同区アンケー街区グエンフオックグエン通り239B番地(239B Nguyen Phuoc Nguyen, phuong An Khe)の外国語センター「ベストワンアカデミー(Best One Academy)」の立ち入り調査を実施した。

センター3階の教室には主に同市に住む学生や社会人の生徒18名がおり、韓国籍1名を含む4名の教員が韓国の新興宗教団体「新天地」の宗教教育を行っていた。新天地が同市内で活動しているのが当局により確認されたのは今回が初めて。

VIET JO 2019/09/04 05:28 JST配信「ダナン:韓国語センターで違法な宗教教育を摘発」より
https://www.viet-jo.com/news/social/190902013239.html

カオダイ教

ベトナムで仏教、カトリックに次いで3番目に多いのが、ベトナムの新興宗教カオダイ教です。カオダイ教の創始者ファン・コン・タックはもともとキリスト教徒でしたが、そのうち仏教や他の宗教の要素も取り入れるようになりました。

ベトナム全国に100〜300万人の信徒がいるカオダイ教ですが、とりわけ総本山のあるタイニン省では人口の3分の2がカオダイ教徒です。

ホアハオ教

ベトナムの新興宗教の中で、カオダイ教に次いで比率が多いのは仏教の強い影響を受けているホアハオ教で、現在でも100万人以上の信者がいるとされています。

ホアハオ教は、南部のホアハオ村出身のヒン・フー・ソーが創設した宗教で、短期間のうちにメコンデルタを中心に多数の信者を獲得しましたが、最近では信者の減少が目立ち始めています。

ココナッツ教

ベトナムの新興宗教の中で最も奇抜な宗教でもあるココナッツ教は現在完全に解体されています。

しかし一時期はメコン川の中心に浮かぶフーン島という小さな島を中心に、1万人ものココナッツ教信者がいてその信者の中にはベトナム戦争時の元アメリカ兵も含まれていたようです。

ココナッツ教はココナッツだけを食べていれば世界が平和になるというのが基本的な教えてで信者はココナッツやヤシの実以外の食べ物は食べてはいけないと教えられていました。

教祖は本当にココナッツ以外のものを食べず、日中の大半をココナッツの木の上で過ごし、夜も横になって寝なかったようです。

一方で道徳面ではあまり褒められたものではなく若い妻を9人作り、フーン島を遊園地のような場所にして生活していました。現在では元ココナッツ教団の聖地として観光地化されています。

1990年に81歳で教祖タオズアが亡くなり、教団はベトナム政府によって解散させられました。教祖は亡くなった時に体重が30キロにも満たなかったようです。

教団の理想としていた世界平和は実現しませんでしたがまさにココナッツに人生を捧げたそんな一生でした。

【まとめ】ベトナム人の宗教感は日本人と似ている

ベトナム人の宗教観は日本人と非常に似ています。

無宗教であると公言する人の割合は高く、宗教にあまり関わりを持ちたくないという人が多い一方で先祖を大切にしていますし、冠婚葬祭は仏式で行っています。

クリスマスやハロウィンなど西洋の宗教に基づいたお祭りは楽しみますが、何よりも大切なのは旧正月でこの時期は親族が共に集まったり、お年玉をあげたりします。

このような宗教観は無意識のうちに日々の生活や考え方に影響を与えるものです。

近年日本人が同じく経済成長が著しいインドネシア人よりもベトナム人を多く受け入れているのは、宗教観が似ていることも少なからず関係しているのかもしれません。

ベトナムの宗教を理解するとベトナム旅行も少し面白くなりますので、この記事を読んだらどうぞベトナム旅行の計画を考えてみてください。

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