学習も運動も指令は脳で行われていて非常に関連し合っているので、学習とランニングを組み合わせると学習効果は倍増します。しかも睡眠の質が上がる、ストレス耐性に強くなる、前向きな気持ちにもなるなどメンタル面での効果もすごい。そしてこれらはとりわけ朝に効果があるんです。
夜は体が柔軟になっているのでランニングのパフォーマスが上がるなど身体面のメリットが強いですが、脳に良い効果を期待しているなら朝のランニングをおすすめします。
この記事では朝ランニングする時の効果の中でもとりわけ脳への効果に注目し、最大限に脳を活性化させる方法や朝ランニングを続けるコツを紹介します。
私は教育学の学士号を持っています。大学では脳の仕組みから考えた興味深い教授法を学びました。この記事では脳の専門家の視点から最新の情報を含めた脳に関する情報を紹介します。
「ウォーキング」「ジョギング」「ランニング」「マラソン」の違い
一般的に
・1kmを10分以上(競歩の場合は10分以下)かけて歩くことをウォーキング
・1kmを5分〜10分かけて走ることをジョギング
・1kmを5分以内で走ることをランニング
・42.195km走ることをマラソン
といいます。この記事はランニングについての記事ですが、基本的にはウォーキング、ジョギング、マラソンにも当てはまります。ランニングはちょっとハードルが高いという人はウォーキングでも脳にしっかりと効果がありますのでおすすめです。
Contents
朝ランニングの脳への効果
朝ランをすることで脳に関係する次のような効果が期待できます。
- 睡眠の質が上がる
- やる気が出る
- 記憶力や想像力がアップする
- 幸せな気持ちになって前向きになる
- ストレス耐性がつく
- 脳細胞や脳の領域そのものが増える
- 爽やかになる
これらの中には夜ランニングをしても効果があるものもありますが、朝しかない効果や朝ランすることで最大限の効果が発揮できるものもあります。
睡眠の質が上がる
朝ランすることによって睡眠の質が上がるのは、朝日光をしっかり浴びることで脳内で「天然の睡眠薬」といわれるメラトニンの分泌が抑制され脳が目覚めるからです。
さらにメラトニンの分泌が止まってから14〜16時間後に再び分泌が始まり少しずつ増えていくので、夜は天然の睡眠薬のおかげで自然と眠くなります。
このメラトニンの分泌が正常でないと体内時計が狂ってしまい、朝は起きてもスッキリしないし、夜は眠りにくくなり、眠れても深く眠れず睡眠の質が下がった状態になってしまいます。
家の中ではなかなか光を浴びることができないと、体内時計がどんどん狂ってしまいますが、朝ランをすることで日光をしっかりと浴びて*体内時計が調整されメラトニンが正常に抑制され、夜は自然に分泌され睡眠の質が高まります。
*曇りの日でもメラトニンを抑制するだけの日光はあります
キムチやチョコレートなどメラトニンを作り出す食材を取り入れると、朝ランでメラトニンの分泌がより活発になります。
メンタルが向上する
朝運動すると幸せな気持ちになるのは、BDNF(脳由来神経栄養因子)という物質が分泌されるから。
私たちが幸せな気持ちになったり想像力が高まったりやる気が出たりするというのは脳の働きですが、BDNFという物質はこれら脳のパフォーマンスを高める物質の肥料となります。
実際最近ではほとんどの抗うつ剤にこのBDNFが含まれていますが、ランニングするとこのBDNFがドバドバ出ますので、薬に頼ることなく*メンタルの底上げが期待できます。
*いうまでもないことですが、うつ病の場合は専門家による治療が必要です
初めて聞いた時私も最初半信半疑だったんですが、実際に気分がスッキリしない時に軽くランニングをしただけで信じられないほどスッキリして前向きな気持ちになりました。嫌なことがあった時や落ち込んだ時はじっとしていると、ネガティブなことを考えて続けて眠れなくなってしまいます。マイナス思考になった時に一度体を動かしてみてください。
このようなメンタル面の効果は夜のランニングにもありますが、一日を前向きな気持ちからスタートできるという点で朝のランニングをおすすめします。
学習能力や想像力が向上する
先ほど解説したランニングをすると分泌されるBDNFという物質は、メンタル面だけでなく脳のパフォーマンス全体を高める働きがありますので学習面でも向上することがわかっています。
- 記憶力が向上する
- 集中力が向上する
- 想像力が向上する
運動と学習の関係が大きく関係するのは多くの専門家が認めていますが、この中でもとりわけ記憶力の向上には目を見張るものがあります。
私が大学で専攻した教育学にはTESOLという英語教育の指導法の中に、運動しながら学習するというものがありました。
その理論は「座って学習すると脈拍が72→60に低下するのに対し、運動をすると72→100へと向上する。よって脳に行く血流も30%向上する。これにより記憶を司る海馬や意思決定をする前頭葉が刺激され学習能力が向上する。」というものでした。
このようにBDNFの分泌とと脳に血流が行きやすくなるというW作用で、ランニングは学習能力が向上するということがわかっています。
何かアイデアが見つからなかった時、決断できない時、英単語を覚えるなど記憶力が必要な時は朝ランニングしてから1日を始めれば新しい発見や学習効果が飛躍的に上がります。
脳細胞や脳の領域そのものが増える
ランニングをするというのは、空気、温度、植物の匂いなどを感じ、五感をフルに活かすことができますので、脳細胞がどんどん増えます。特に新しい道を走ると脳への刺激が強まります。
実際ネズミを使った実験でも証明されています。その実験によると餌だけ何もない場所で飼育されたネズミは記憶を司る海馬がダメになりますが、トンネルや回し車を置いてあげるなどおもちゃを置いてあげると海馬が発達しました。
とりわけ在宅ワークをしている人は目と耳を少しだけ刺激になってしまいますので、刺激がないと脳はどんどん萎縮してしまいます。
朝ランニングをして脳を刺激してあげると脳細胞が増えますので、学習や仕事のパフォーマンスも上がります。
爽やかになる
朝ランニングをすることで爽やかになるのは、植物が新鮮な酸素を出しているからです。
植物が酸素を出すのは日の出からぴったり42分後のようですが、鳥もそれを知っていて植物の酸素放出に合わせてチュンチュン鳴きながら活動を始めるそう。
ランニングは酸素をいっぱい吸い込むことになりますが、どうせ酸素を取り入れるなら新鮮な酸素がいいと思いませんか?
そしてもちろんただ爽やかになるだけでなく、新鮮な酸素は脳に届きリラックスと共に学習能力やメンタルも向上します。
脳が喜ぶ効果的な朝ランニング
脳へのある程度の効果を望んでいるなら、ただ朝ランニングをするだけでなくある程度の「型」が必要です。
ここでは次の点について詳しく解説します。
- 朝ランニングを始める時間と頻度
- ランニング前にすること
- ランニング中にすること
- ランニングコース
週に何回朝何時にランニングをすると脳に効果的?
理想なのは日の出から42分後以降の時間帯から週に3回(1〜2日おき)、20〜30分走ると脳の機能を高めるのに効果的です。
メラトニンを抑制する日の光を浴びながら新鮮な酸素をいっぱい吸うことができ、かつ体を休ませてあげることもできるからです。
この記事を読んだあなたはランニングの効果を知って毎日でも走りたいと思うかもしれませんが、もしそうならランニングの次の日はウォーキング程度にしておきましょう。
逆に週に3回もランニングをするのはきついと思うときは、1回5分でもOKです。
週に何回何時に始めるかよりも大事なのは習慣を崩さないことです。下記の記事ではランニングを含む朝活を始める時間帯について解説しています。
ランニングをする前に水分・栄養補給をしよう
起きてからランニングをする前に最低でも30分空けて、その間に水分と栄養を取り軽いストレッチをしてください。
寒い日の朝いきなりエンジンを回してフルスピードで走ると車に良くありません。同様に私たちの体も起床後は体温が低く心拍数も低いので、いきなり走るとの脳に大量の血液が流れ込み最悪の場合脳梗塞の危険さえあります。
加えて寝ている間は汗をかき脱水状態になっていますし、寝ている間は食事できないので栄養不足になっています(脳は寝ている間も動いている)。
まず起きてコップ1杯の水を飲み、その後牛乳、フルーツジュース、スポーツドリンクなど胃に負担のかからないものなどで栄養を補給しましょう。
私はランニングをする場所がゆっくり歩いて10分ほどのところにありますので、その前に準備をしながら水分や栄養を取ったりするとちょうど30分くらいたちます。
ランニング中はデュアルタスクを
ランニングをしながら学習をするというデュアルタスクは効果的に学習できるだけでなく、脳そのものが向上する最高の方法です。
運動と学習の関係はすでに解説しましたが、これを同時にすることで前頭葉が刺激されるので記憶しやすくなり脳の機能がアップします。
これらをすると運動しながら学習するという時間の節約になるだけでなく、前頭葉が刺激されますのでその時の学習効果は高くなり、刺激されることによって能力そのものが改善されます。
脳のためにランニングをするならただ走るだけではもったいないので、このようなデュアルタスクをしてみてください。
毎回同じコースに行かない
五感を刺激しながら運動をすると脳に効果的であることはすでに解説しましたが、脳は新規の刺激を与えると海馬が大きくなるということがわかっています。
東京大学大学院薬学系研究科教授で海馬を主に専門に研究している池谷裕二氏は、タクシードライバーが一般人よりも海馬が大きく、勤続年数が上がるにつれて大きくなるという研究結果を紹介しています。
タクシードライバーはいつも同じ場所を通勤するサラリーマンと違い、いつも違う道を通るなど新規の刺激にあっているので海馬が大きくなっているようです。
ランニングもいつものルートを少し変えるとか、たまには車に乗って違う場所をランニングしてみるなどすると海馬が大きくなり記憶力が向上します。
脳をだまそう!朝ランニングを続けるコツ
どんなに脳に効果があるとわかってもいざランニングを始めると、「今日はやめておこうかな」と思う日が必ずくるものです。
でも脳の構造を知っておくと、やる気がない自分をやる気にさせることができます。
次の記事では早起きへのやる気を失うことなくを習慣化させる方法について書かれていますので、これからランニングをやる気にする方法について解説します。
やる気がでないならまずやる
一見矛盾しているように思えるかもしれませんが、脳は行動するとやる気がでてくる構造になっています。
あなたも部屋の掃除をする気がないので机の上だけをきれいにしようと思ったら、やっているうちに部屋全体の掃除をしてしまったというような経験はありませんか?
やる気が出る仕組みというのはすでに解明されていて、それは脳の側坐核(そくざかく)という場所を刺激するということです。そして「何か」をすれば側坐核は刺激されます。
つまりランニングをしたくないというときは、ランニングをしようとすれば即座核が刺激されて興奮状態となり「ランニングをやりたい」という気分が上がってきます。
「でもそもそもランニングをやる気がないからランニングができない」と思うかもしれません。
即座核はとにかく行動をすれば刺激されますので、あらかじめランニングするまでのルーティーンを作っておくことをおすすめします。
例えば私は次のようなルーティンとなっています。
起床→カーテンを開ける→シャワーを浴びる→水を1杯飲む→牛乳を飲む→服を着替える→軽くストレッチをする→目的場所に行く
朝起きてどうしてもランニングに行きたくないというときも、とりあえずストレッチまでを目標にして頑張ります。
すると大抵牛乳を飲むあたりからスイッチが入り始め、ストレッチから目的地まではほぼ無意識で行くようになりました。
ずぼらな私でも定期的にできるようになりましたので、きっと脳が正常に動いている人なら誰でもできるかと思います。
次の記事では朝ランなど朝活をする時、夜から朝までのスケジュールの立て方について解説していますので参考にしてください。
形から入るかご褒美か
側坐核(そくざかく)はドーパミンを出すとやる気が維持できることがわかっていますので、ランニングの習慣を長続きさせることができます。
ドーパミンはお気に入りのものを買うとかちょっと無理して高価なもの(かつ価値が高いもの)を買うと放出されますが、報酬という形でもドーパミンが出ます。
それでまず「形」から入ってお気に入りのランニング用シューズなどを買い、3ヶ月継続できたらスマートウォッチを買うなど「ご褒美」も設定してみてください。
ちなみに報酬は小刻みの方が効果が高い(その都度ドーパミンが出る)ので、30個貯まったらアップルウオッチを買うなど「スタンプカード制」にしておくこともおすすめです。スタンプを押すごとにドーパミンがピュッと出ます。
最初はランニングと関係するものがいいですが、すでにそろっているなら関係ないものでもちゃんとご褒美になります。
- ランニングシューズ(スケッチャーズのGO RUNシリーズのような足に負担をかけないものがおすすめ)
- スマートウォッチ(Nike Run Clubなどランニングを記録するアプリが便利)
- ワイヤレスイヤホン(音楽を聴いてモチベーションを上げる、英語のニュースを聞いてデュアルタスク)
- 光目覚まし時計トトノエライト(朝起きられない人必須)
- 旅行に行く(脳を活性化する)
- ラーメンを食べに行く(ご褒美)
- お気に入りの服を買う(ご褒美)
- 新しいパソコンを買う(ご褒美)
- 朝活できるカフェに行く(ご褒美)
睡眠の質を上げる
睡眠の質を上げると朝スッキリと目が覚め、毎回の朝のランニングが爽やかで気持ちよくなりますので、長続きしやすくなります。
朝ランニングをしたいという人には時間を有効に使いたい人も多いと思います。でも睡眠時間を削ってまで朝ランをすると毎朝起きるのが苦しくなり、ランニングそのものも苦しくなりますので、ランニングができない理由を脳が探し始めます。
ランニングのパーソナルトレーナーをしている高山敦史氏も、朝ランの効果を十分に得られなくなる3つの中の1つ目に「睡眠時間が少なすぎる」を上げています。
睡眠時間が同じでも睡眠の質が悪いと朝の目覚めは悪くなってしまいます。睡眠環境や食べ物で睡眠の質はあげることができますので、朝ランを始める前に睡眠の質を見直してみてください。
【まとめ】朝ランニングをして効果的に脳を鍛えよう
今回は朝ランニングをすることがどれほど脳に効果があるかを解説しました。
- 朝ランニングをすると脳が活性化するので学習能力やメンタル面が向上する
- 週に3回20〜30分ランニングするとと脳に効果的
- ウォーキングなら毎日してもよい
- やる気がでないならまずやる
夜ランニングをすると体を効果的に鍛えられるとか、午後にコーヒーを飲んだ後ランニングをするとダイエットになるなどの美容効果がありますが、脳を鍛えたいなら朝ランをするようにしましょう。
朝は予定を立てやすく誰にも邪魔されにくい時間帯なので、継続しやすいというメリットもあります。
朝ランを今から続けておけば強い体と強い精神、そして強い脳を作り出すことができます。
朝ランをする日以外、または朝ランをする前後にできるおすすめの朝活については、次の記事を参考にしてください。
学生で勉強しなければいけなんだけど全然集中できない。朝のランニングが脳に効果があるって本当?